前提と開廷前の状況

この判決はこの事件のものである。
2017年3月10日の15時の判決を前に、
広島地裁304号法廷には報道関係者含め多くの傍聴人が集まった。
カメラと三脚を廊下に置き、我が物で小汚い顔の取材陣は、
開廷前の法廷内の撮影が許可されている。

これだけ多くの人が集まるということは、
この事件がそれだけ注目されていると言えよう。

開廷中のランプが点灯し、
弁護士や検察官、取材陣が先に法廷内に入る。
14時46分ごろ続々と法廷内に入っていく。
座席には「記者席」とカバーが掛けられているものもある。
裁判官が入廷し、取材陣による謎の撮影が始まる。
裁判所職員が撮影可能時間をカウントし、撮影が終わる。
そして、裁判官が退廷した。

14時58分、2人の被告人が入廷し、解錠される。
15時、裁判員と裁判官が入廷する。

主文と要旨

両名とも懲役9年、未決勾留日数180日をその期間に算入する。

両名は、Rに対して適切な保護せず、適切な医療を受けさせないで放置した結果、
Rが呼吸循環不全を招いたものと思われる。

理由

Rが衰弱して痩せ細っていたにもかかわらず、
十分なミルクを与えず、医療機関にも受診させていない。
両名は親としての責任を放棄していたとしか思えない。

自分たちは2階建の2階に住む一方、子供を1階に放置していた。
Mは統合感情失調障害や知的障害があるとは言うものの、
医師の鑑定結果から、そのことが事件に影響を与えていない。
生活保護の手続きなどができていることからもうかがえる。

レンタカーで2人で出かけるなど、自分勝手な行動を繰り返し、
Rへの愛情を持っていたとは到底感じられない。

今回の事案は、同種事案の中でも重い部類に属する。
反省の意を述べているものの、それを伺うことができない。
Aの母親がAの監督保護を約束しているが、
それを理由に罪を軽くすることはできない。

有罪判決のため、
不服であれば明日から数えて14日以内に控訴することができる。

被告人の最後の言葉

二人に与えられる時間はなく、閉廷となった。

感想

個人的な感想だが、夫婦の両者の責任は当然に重い。
しかし、AがRを愛していたという感情を持っていたとはやはり感じられない。
というのも、過去の公判で証人であるAの母親が次のような趣旨のことを述べていたからである。
Aは手の込んだ料理(ロールキャベツ)を作るなどして、
家事をがんばっていた、と。

赤ちゃんが食べれるものではなく、夫を嫌っているAが何故、
ロールキャベツなど作る必要があるのだろうか。
難しい料理にチャレンジすることは良いことだが、
なんだか腑に落ちないと感じた。

懲役9年というのはちょっと長いなと思った。
以前、空手家による傷害致死をレポートしたが、それが懲役5年であるのに対して、
約2倍の期間であることに、違和感を覚えた。

この事件の被害者の遺族は、被害者の親であるMとAなのであるから、
同種事案の中でも重いというのが具体的にどの程度なのか疑問であった。