特許明細書の主な構成要素とは

企業の知財担当者や一般の人が特許明細書を見るときに、
少なくともここを見とけ、というポイントを元に、
書類の構成要素を説明していきます。

特許請求の範囲

権利内容、つまり特許にしてもらいたい内容を、もれなく、分かりやすく正確に書きます。
基本的には、わかりにくいです。読みづらいというべきでしょうか。
日本語がわかりにくく、特に理解しにくいです。

背景技術

特許にしてもらいたい発明の元になった背景(経緯)を書きます。
既にある技術を記載する場合が多いです。
「以前は○○のような技術があった」みたいな感じですね。
大した重要性はありませんが、日本語の文章がおかしいかどうか、
学ぶべきポイントは多いです。

発明が解決しようとする課題

背景技術に存在する課題を明らかにして、
自らの発明がその課題を解決することを説明するために書きます。
要は、従来の問題点とその改善策を記載するという感じですね。
そこそこ重要な内容になります。

課題を解決するための手段

課題をどのように解決するのか、という部分で、
一般には「特許請求の範囲」の内容と整合性を持たせます。
というのも、「特許請求の範囲」は課題を解決するための内容を記載するもので、
ここの欄とあい通ずるものがあるからです。

発明を実施するための形態

自らの発明を、同業者に理解できるようにした説明書的扱いの部分です。
これをみた技術者が理解できないといけません。

また、特許請求の範囲の内容を詳細に補足する内容でないといけません。
例えば、特許請求の範囲での記載で、ある数値が「3以上」と記載していたら、
ここの項目には当然、そのある数値が3以上である旨説明しないといけません。
4以上だということで説明すると、整合性が取れないからです。
基本中の基本です。

なお、図面を用いて説明する場合がほとんどですので、
図面を参考にして読み解くことが通常となっています。

実際の内容を検討してみる

それでは、興味ないと思いますが、
実際の内容を見ていきましょう。
今回は「特開2013-108996」を参考にします。
ですが、全部説明すると長いので、今回は「特許請求の範囲」の一部だけにしときますね。
おもろないけど、もうちょい付き合ってくれたら、いとおかし。
残りは後日に。

実物の【特許請求の範囲】【請求項1】

機器に対する衝撃を検知する装置であって、
プリント基板と、
前記プリント基板上に半田ボールを介して取り付けられる部品と、
を備え、
前記半田ボールによる前記プリント基板と前記部品との間の導通状態が切断されることを利用して、前記機器に対する衝撃を検知し、
前記プリント基板上に基板上回路が形成され、前記プリント基板上に第1~第N(N: 自然数、N≧3)の半田ボールを介して前記部品が取り付けられており、
前記部品は、
前記第1~第Nの半田ボールとそれぞれ接合される第1~第Nの接続端子と、
部品内連結回路と、
を含み、
前記基板上回路は、
前記第1の半田ボールと接合されるとともに、第1測定端子を有する第1基板上回路と、
前記第Nの半田ボールと接合されるとともに、第2測定端子を有する第2基板上回路と、
基板上連結回路と、
を含み、
前記第1~第Nの半田ボールが、前記部品内連結回路と前記基板上連結回路によって連結されることにより、前記第1測定端子と前記第2測定端子との間が導通しており、
前記第1~第Nの半田ボールが、前記部品内連結回路と前記基板上連結回路によって連結されることにより、前記第1測定端子と前記第2測定端子との間に各半田ボールを接続する複数の回路が直列接続されており、
前記複数の回路を構成する各回路は、導線のみからなる回路、または、導線および抵抗器のみからなる回路である、
衝撃検知装置。

非常に読みづらいですね〜〜〜まいったなこりゃ〜

検討結果と問題点

読みづらいですが、目立つように印をつけてみました。
赤文字部分にでましたねー、数値。
Nが3以上だと書いてますね。つまり、3,4,5・・・ということです。
Nは「半田ボール」の数(接続端子の数も)を表していることが読み取れます。
つまり、「図面」と「発明を実施するための形態」で、半田ボールが4個ではなくて
3個でよいことを記載する必要があります。
とても簡単なことですね。そういう図面と文章を書けばいいだけです。

それでは、
特開2013-108996
の「図面」と「発明を実施するための形態」を実際に見てみましょう。
まず、図面は図1〜図9までありますね。
図の中には符号が振られていて、半田ボールの符号はB1〜B8みたいですね。
半田ボールは図2以降に記載されてます。

・・・・半田ボールは何個ありましたか?
私には4個以上あるようにしか見えませんでした。。。。

しいて言うなら・・・

この発明って、構造に特徴がある物ですので、回路の構造だけで特定した方がよいと思います。
つまり、
「前記半田ボールによる前記プリント基板と前記部品との間の導通状態が切断されることを利用して、」
などという、ある意味、効果や動き、仕組み的なことを書くのはどうかなと思います。
言いたいことは、
半田ボール、プリント基盤、部品が電気的に接続されているから、
電気的接続が断たれることで(導通状態が切断されることで)、衝撃が検知できるってことだと思うのです。
だから、構造(接続状態)だけを特定しさえすればよいかと。
物が電気的に接続されていれば、電気的な接続が断たれたら電気が流れないことは、
誰でもわかると思うからです。

このように、イケテナイなぁと感じる、おもしろい日本語文章を使う書類が多いのが現実です。
しかも、こういうのにお金を払ってるんだから余計にダメなんじゃ?と思います。
これを書いた側(特許事務所)や、これを納品された側(企業)は、
かなり残念やなーと思った今日この頃です。

しかし、学ぶにはいい教材ですよね。
企業の知財担当者はしっかりとポイントを押さえましょう!