前回の復習
前回は「統一性がない」場合について説明しましたね。
統一性がないことから生じる疑問は理解できましたか?
また、実際に疑問を感じますでしょうか?
整合性がない場合もそうですが、
統一性・整合性の2つが欠けると、もはや読み手の意欲は削がれると思います。
実際、特開2013−108996の特許明細書は日本語の表現もくどいので読むのが・・・・となりませんか?
しかし、このサイトを見て勉強している方は、
もう統一性と整合性については、その見抜き方を身につけているので、
後はアウトプットなどの実践を積んでいけばいいだけです。
今回の注意点は最後で簡単
今回はこちらの中の3つ目で、「特許庁のフォーマットと異なる」場合についてです。
これは単に本来のフォーマットと比較するだけなので、とても簡単です。
この簡単な注意点を最後に紹介するのは、
先に難しいことをやる方が後が楽という発想があること、
前提としてプロが仕上げる書類は基本的にフォーマットに沿っているものだということ、
などがあります。
また、フォーマットと統一性・整合性が絡むこともあります。
どういうことでしょうか??
では早速、特許法施工規則で紹介されている特許明細書のフォーマットを見てみましょう。
PDFファイルが特許庁のサイトからリンクされてたので、それを見てましょう。
上記リンク先URL:
https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/syutugan_tetuzuki/02_03.pdf
また、特許明細書の各項目(【背景技術】や【発明を実施するための形態】など)について、
必須や任意を説明しているページはこちら
上記リンク先URL:
http://www.pcinfo.jpo.go.jp/guide/Content/Guide/Patent/Meisai/doc/P_Meisai.htm
これを見ると、特許明細書って、結構任意項目が多いんだなと思いますね。
これと比較するために、またまた同じ特許明細書の実物を見てみましょう。
前回と同じ特許明細書
同じなので、「またかよ!」となるかもしれませんが、辛抱してください。
フォーマットと実物を比較・検討してみる
前回と同じ特許明細書の3ページ目の【技術分野】の項目から、フォーマットと比較してください。
前回と同じ特許明細書と特許法施工規則で紹介されているフォーマットを比較しましたか?
どちらにも【技術分野】、【背景技術】、【図面の簡単な説明】など記載がありますね。
さすがプロというか、当たり前ですね。
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前回と同じ特許明細書とフォーマットとで項目の有無に気づいたでしょうか?
フォーマットには【産業上の利用可能性】という項目がありますが、
プロが書いた特許明細書にはありません。なぜでしょうか?
【産業上の利用可能性】という項目は、任意項目なのでなくても問題はないです。
しかし、なぜこの項目だけが存在しないのでしょうか。
ここで「統一性」を思い出してみましょう。
任意項目を全て記載しないことに統一させる、なら疑問はないでしょう。
例えば、整理された本棚のうちの1冊の本が飛び出てたり、向きが逆だったら疑問ですよね?
「なぜこの本だけ?」と。
本棚は整理されることが必須ではなく、どの本をどういう順序で配置するかは任意です。
図書館などでは、わかりやすくジャンル別に置いてますが、あくまで名前の順など、
識別しやすいと思われる一般的規則で本は並べられることが多いでしょう。
似て非なることが、今回説明している特許明細書にも起きていることがわかりますか?
なぜプロは【産業上の利用可能性】を記載しなかったのか。
理由はいくつか考えられます。
・重要な項目ではないため
・行数(特許明細書の枚数)を削減するため
・任意項目だから
・面倒だから
・そもそも知らなかった
などです。
しかし、どのような理由を考えても、
他の任意項目を記載していながら、【産業上の利用可能性】を記載しない理由にはならない、
と私は思います。
このように、統一性のなさがフォーマットに通じて特許明細書に表れています。
これを読む方々には、こういった些細なことでも気にかける仕事をしてもらいたいのです。
偉そうに申し上げますが、「しない」ことに正当な理由があればOKですが、
その理由が明らかでなければ「しない」ことは避けた方が無難です。
任意項目だから記載しなかった。この理由はわかります。
ところが、任意項目であっても記載の有無がある以上、
なんらかの恣意が働いていそうじゃないですか?
技術文章がそのような恣意で仕上げられてるとしたら、
ましてそんなものが納品されてるとしたら・・・・・
もはや、技術文章の域を超えて、疑問を覚える練習になると思いませんか?
知財担当者だけではなく、文章を納品される可能性がある方は十分に気をつけましょう。