特許明細書に感じるべき違和感とは
まず、興味がある人はごく稀だという前提のもと、
素人(個人発明家や企業の知財部、研究職)が特許明細書を納品された場合に、
どういうポイントを押さえておかないといけないのか、
ということを都度解説していくための内容であることをご了承いただきたい。
素人は特許明細書のどういう部分に違和感を感じるべきでしょうか。
わからない場合は、まず以下の点に注意して明細書等をチェックするべきです。
・統一性がない
・整合性がない
・特許庁のフォーマットと異なる
特許明細書の書き方(構成)は、弁理士や特許事務所により様々ですが、
上記の点について独自のやり方を貫いている場合があるので、
そのやり方を明確に説明できない限りは依頼側が徹底的に指摘するべきです。
まして、「フォーマットが異なる」という理由は特にないかと思います。
違和感を減らすためのポイント
違和感があるまま特許事務所の話を鵜呑みにしていくのは危険です。
例えば特許事務所側が「弊所ではそういうやり方をしています」などという、
理論的根拠もないことを主張する場合、その事務所の利用価値はありません。
それでは、興味ないと思いますが、
実際の内容を見ていきましょう。
今回も「特開2013-108996」を参考にします。
まず、前回も軽く触れましたが、
「特許請求の範囲」と「課題を解決するための手段」を見てみましょう。
ポイントは、
「特許請求の範囲」の「請求項」の数と、
「課題を解決するための手段」の内容の比較です。
特開2013-108996の請求項の数は2つですね。
一方、「課題を解決するための手段」の欄に記載されている発明は8つですね。
なぜ後者の方が数が多いのでしょうか?
違和感ありませんか?
特許にしてほしいと主張する「請求項」の数は2であるのに対して、
それよりも多い数の発明を、「課題を解決するための手段」に記載する理由はなんでしょうか?
上記の数を式で表すなら、
請求項数(2) < 課題を解決するための手段の発明数(8)
となってますね。
さらによく見ると、「特許請求の範囲」の「請求項1」の内容は、
「課題を解決するための手段」の第1〜第3の発明を組み合わせたものに似てますね。
しかしながら、「請求項1」の最後から2行目(以下引用)、
「前記複数の回路を構成する各回路は、導線のみからなる回路、
または、導線および抵抗 器のみからなる回路である」
という内容については、「課題を解決するための手段」に記載がありません。
ここに気づくか気づかないかで、企業の知財担当者や発明者は、
特許明細書のレベルを見抜く力に差がでます。
どういう構成であれば好ましいと言えるか
では、「特許請求の範囲」と「課題を解決するための手段」が、
どういう構成になっていれば好ましいでしょうか?
上記に、
請求項数(2) < 課題を解決するための手段の発明数(8)
という式を記載しましたね。
これが、
請求項数 ≧ 課題を解決するための手段の発明数
となるのがいいと言えます。
例えば、特開2013-108996について言えば、
「特許請求の範囲」の請求項1の内容は、
「課題を解決するための手段」にそのまま「第1の発明」として記載してしかるべきと思います。
結局、「特許請求の範囲」には2つの発明しか書いてないのだから、
「課題を解決するための手段」の記載もそれに合わせたらいいじゃないかということです。
特許権としての効力がある「特許請求の範囲」に記載の発明は2つなのに、
特許権としての効力がない「課題を解決するための手段」に発明を何故8つも書いているのか、
しかも、内容に整合性がないのに、ということです。
こういうことに違和感を覚えるように慣れると、
特許事務所から納品された書類をチェックするのがちょっとは楽になります。
今回は「整合性がない」パターンの1つを例に説明しましたが、
技術(専門)文章を読んでて違和感を抱かれるのはよいとは言えません。
単なる誤字・脱字ならまだしも、
文章構成について素人に違和感を持たれることはプロの仕事ではありません。
担当者は注意してみましょう!