くどい表現を避ける

教材は同じ特許明細書[特開2013-108996]

こちらで紹介した特許明細書。
読めば読むほど「なんでこんなこと書いてるの?」と思えてくることが多々あります。

今回も同じ特許明細書を元に、避けたい日本語の表現を解説していきます。
それでは早速、背景技術の段落【0003】と【0004】を見てみましょう。
これら2つの段落を下記に引用します。
ちなみに全文はこちら

【0003】
電子機器を落下させるのは、ユーザだけではない。たとえば、電気メータの設置作業員
が、設置作業中に誤って電気メータを落下させる場合もある。
【0004】
電子機器は、精密な部品で構成されているため、落下によって、電装部品、基板等が破
壊、変形する場合があり、電子機器の故障の原因となる。

くどいだけの文章

どうですか?すでにくどいですね、これ。
「電子機器を落下させるのは、ユーザだけではない。」
って、そりゃそうだし、誰でも物を落とすことあるわぃ!って思いますよね。
しかも、「たとえば」と「設置作業員」を持ち出す下りも意味がもひとつはっきりしません。
電気メーターの話をする必要があるのでしょうか?
行数を稼ぎたいだけなんじゃないか?と私には思えます。

くどさに文章の狙いはあるのか?

もしかして、こんなことをあえて書くということは何か特別な意味合いがあるのか?
と、入念に考えてみました。

しかし、文章そのものを素直に読んで、その意味合いというか、意図を汲み取れなければ、
技術文章としては意味がないんですよね。それが技術文章というものです。
さらに、段落【0004】の文章に至っては、もはやあたり前のことを書いてるだけです。
「電子機器は、精密な部品で構成されているため、」
そんなことは専門家じゃなくても知ってますよね。。。

つまり、この2つの段落は大した意味がないんです。
しかもくどい。分かり切った当たり前のことを書くのは避けるべきです。

くどさを取り除いた例

私ならこう書きます。
ーーーーーーーーーーーーここからーーーーーーーーーーーーーーーー
 電子機器を扱う人は、電子機器を誤って落としてしまう場合があり、
それにより、電子機器の故障を招くおそれがある。
ーーーーーーーーーーーーここまでーーーーーーーーーーーーーーーー
これだけで十分意味が通じるはずですね。しかも文章が短いですしね。
特許明細書のページ数を元に、お金を計算する特許事務所があるので、
無駄に意味のない文章で行数を稼がれてページ数が増えたのではたまったもんじゃないです。
1ページ当たり4000円とかしちゃったりね。

極論的な話

以上の点を踏まえると、上記2つの段落(【0003】【0004】)はそもそも不要で、
何も書かなくてもいいように思います。それだけ無駄に思える文章ということです。
ましてや、外国出願用に翻訳することになると、無駄な文章の翻訳費用も発生することになり、
金をドブに捨てることになりかねません。

修飾語の位置にも注意

段落【0003】の後半に着目してみましょう。

設置作業中に誤って電気メータを落下させる場合もある。

ここでちょっと気になる修飾語として「誤って」という語があります。
この「誤って」という修飾語は何にかかるのでしょうか?
おそらく「落下させる」にかかるのだと推測できます。
つまり、「誤って落下させる」という文章のはずです。

これを踏まえると、
「設置作業中に、電気メータを誤って落下させる場合もある。」
とした方がいいと思いませんか?

このように、修飾語と被修飾語の位置関係を気にしながら書くというのも、
理解しやすい技術文章を書く上では非常に重要です。

特許事務所から納品される書類をチェックする担当者は、
文章をチェックする際の参考にしてください。