厳密さを求められる書類ほど正確性が必要
作文や小説などの文章であれば、
読み手の想像力を掻き立てるような文章は魅力的だと思います。
また、ブログなどの内容も個人の自由に表現してしかるべきだと思います。
しかし、特許明細書は技術文章という位置付けであるため、
曖昧さを残すことは紛争の原因になります。
特に、こちらで説明した「特許請求の範囲」と「発明を実施するための形態」の曖昧さは危険です。
これらはテクニカルタームや特殊な言い回しを多く含む場合があって難しいと思うので、
今回は「背景技術」の日本語表現を見ていきたいと思います。
特許明細書の日本語文章の基本
当たり前ですが、主語と述語は必要ですね。
主語が明らかである場合、日本語の主語は省かれることがあります。
例えば、「明日、遠足に行く」の主語は省略されてますが、
主語は「私は」などの「人」になることが想像できます。
では、実際の特許明細書の「背景技術」を見てみましょう。
今回は基本的にはこちらと同じですが、実際に特許になった「特許公報」からの引用です。
特許番号は「5497929」です。
【背景技術】
【0002】
携帯型ゲーム機、ノートパソコン、携帯情報端末、携帯音楽プレーヤなど、様々な電子機器が存在する。これら電子機器は、ユーザが持ち歩くことが多いため、誤って落下させる場合がある。また、携帯型の機器でなくとも、機器を購入して持ち帰るときや、機器の設置作業中などに誤って落下させる場合はある。たとえば、DVDプレーヤ、デスクトップパソコン、プリンタなどを購入し、その製品を搬送する途中で落下させるような場合が考えられる。
この段落【0002】の文章は、4つの文章で構成されていることがわかりますが、
どうですか?主語ってわかりますかね?
文章を区切って解析する
日本語の表現を把握するためには、1つの文章を短くすることが重要です。
特許明細書の1つの文章は120文字以下であることが望ましいと、
私は以前聞いたことがあります。
段落【0002】の文章はこれをクリアしてます、ナイスです。
それでは主語はどれでしょうか。。。
1つ目の文章の主語は「電子機器」でしょうかね。
述語は「存在する」でしょうか。
つまり、1つ目の文章は、
「電子機器は存在する」と置き換えると最短になりますね。
・・・・・ちょっと意味がわかりにくいですね、これだと。
結局、この1つ目の文章で、何を言いたいのか?ということですね。
もっと言うと、様々な電子機器が存在する、と言いながら、
例を挙げているのは、基本的に持ち歩き可能(モバイル向け)のものですよね。
さらに、残り3つの文章を見ると、
結局電子機器を落下させることがあるってことが言いたいだけのでようです。
早い話が、モバイル向けの電子機器であっても、そうでない電子機器であっても、
それを扱う者は落としてしまうことがある、ということですよね。
決して「電子機器が存在する」ということを言いたい訳ではないはずです。
だとしたら、もちっといい表現あるだろうと思うんです。
特許明細書を書いたのはプロ(特許事務所)でお金取ってるんだからちゃんとしろよってね・・・・。
私ならこう書きます。
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近年、携帯型ゲーム機、ノートパソコン、携帯情報端末、携帯音楽プレーヤなど、様々な電子機器を持ち運ぶ機会が増えている。その結果、ユーザがこれらの電子機器を誤って落下させる可能性も増えつつある。また、DVDプレーヤ、デスクトップパソコン、プリンタなどの携帯向けではない電子機器を運搬したり、設置したりする最中であっても、作業者はそれらの電子機器を誤って落下させることがある。
ーーーーーーーーーーーーここまでーーーーーーーーーーーーーーーー
どうですか?
プロ(弁理士)が書いた(有料)のと、私が書いた(無料)のでは、どちらが理解しやすいですか?
主語と述語の関係や、文章のつながりを意識してないと、
文章を書く側目線での主観的な文章になってしまいがちです。
技術文章は特に客観性が必要になりますので、参考にしてみてください。
・・・・・参考にする人はいないか(笑)